師匠と私

 


私と書の師匠、重本一晃氏とは直接には僅か13年の師弟関係でした

しかし、溢れるくらい沢山の事を懇切丁寧に教えて頂きました
考えると、当時若い私にどれほどの忍耐力でもって

接して下さったのでしょう か、、


今は亡き我が師匠は

「書は誰でも出来るのだ、書でも心の華を咲かせるのだ、
見栄はいらない、小手先で書いてはいけない、

自分を閉じ込めては可哀想」と

諭すような一言一句だったように思います

私は、書を通していろんな事を学ばせていただきました
一度も叱られた事のない私でしたが、これだけはよく言われていました


「習字と書道とは違うんだ 書は自由なんだよ、楽しく書いてもいいし
泣きながら書いたって構うものか
ただね、一つだけしてはいけない事があるんだな、

それはね、雑に書いてしまう事だよ


『雑に書いてしまう』

『雑に生きてしまう』


これほど駄目なものはないね

絶対にしてはいけませんよ

私の教室も禁止事項はこの一点だけです

師匠は針でした

弟子は糸でした


今は針のない私ですが、その代わりをしてくれているのが
師匠の書技術と遺志を根幹としている日々の練習は勿論のことですが
私の教室で書を学んでくれている方々の力は大きいです

また多くの方々に書に息を吹き込む力を与えてもらっています
これは私の力の一部です


いつかこれが実になり、今度は私自身が、師匠の遺志を自分のものとして
教室に来られる方の書の師となれるよう 豊かな書が残せるよう
益々自分を磨いて行きたいと願っています